リスタート

「やあやあみなさん。山の陽気なお友達。いい団子はいかが?」

突如の申し出に、山で暮らしていた犬、猿、雉はたいそう驚きました。

「いえ、お気持ちはありがたいのですが、そうやってみだりに野生動物にエサを与えてはいけません。お互いのためにならないのです。ところであなたはどなたですか」

「やや、これは失敬。申し遅れましたね。わたしは桃太郎太郎太郎桃桃太郎太郎桃太郎桃桃桃桃桃太郎桃太郎太郎桃桃です」

「は?」

「桃太郎太郎太郎桃桃太郎太郎桃太郎桃桃桃桃桃太郎桃太郎太郎桃桃」

「は???」

肩を寄せ合い、不審そうな眼を向ける動物たち。しかしそんなことは気にとめる様子もなく、彼は自由な調子で話を続けます。

「みなさんは、昔話の"桃太郎"を知っていますね?桃が川を流れていると、おばあさんに拾われてしまうが、中から男の子が生まれてきてやがてそれが桃太郎という名をさずかる・・・という物語です」

「そこが話のピークではぜんぜんないと思いますが、まあ、確かに知っていますね桃太郎は」

雉が訝しがりながらも答えると、他の二頭もそれぞれに首肯しました。すると、桃太郎太郎太郎桃桃太郎太郎桃太郎桃桃桃桃桃太郎桃太郎太郎桃桃は気を良くしたらしく、その場にどっかりと座り込んで、言いました。

「わたしはあれの子孫なのですよ」



-2-

「順を追って説明しましょう。まずあのお話の後、私の先祖・・・つまり桃太郎は、色々あって子を設けました。その子は、桃太郎の子供なので桃太郎太郎と名付けられたそうです。」

「えぇっ・・・」

「そして桃太郎太郎が大人になりまた子供ができると、桃太郎太郎の子供ということで桃太郎太郎太郎という名前を与えたのだとか。あっコレきび団子ですけどよかったらどうぞおいしいですよ」

葉っぱの上に並べられた団子に、犬がそろそろと顔を近づけようとするので、猿が制止しました。

「それで・・・。桃太郎太郎太郎は桃農家になり、自分の畑で独自の品種の開発をはじめました。そうして作られた桃は桃太郎太郎太郎桃と名付けられました。売れ行きは芳しく、これは事業を拡大しようということになったそうです。それに伴って、その桃の次を担う"桃太郎太郎太郎桃桃"という二代目銘柄を作ったところ、中から男の子が生まれたので、桃太郎太郎太郎桃桃太郎と名付けた・・・と。」

「はぁ・・・」

「そんな感じで世代交代をくりかえし、生まれたのがこの私というわけです。どうです納得いただけたでしょうか。」

「まあ一応は」



-3-

「さて、ここで出会ったのもなにかの縁でしょう。先祖に倣い、それぞれの子孫が再びきび団子を分かち合い義兄弟の契りを結ぶ。それも悪くないと思いましてね。どうです?犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬さん、猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿さん、雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉雉さん」

「その命名メソッドはおたくの家系だけです。あと祖先の数を勝手に推定するのはやめてください」

「平均寿命から逆算したんですが、いけませんでしたかねテヘペロ鬼ヶ島」

桃太郎太郎太郎桃桃太郎太郎桃太郎桃桃桃桃桃太郎桃太郎太郎桃桃ははっはっはと声をあげて笑っていましたが、あまりにのけぞったためにバランスを崩してしてごろんと転がり、後方の崖に転落してしまいました。動物たちはあわてて駆け寄り、崖下を覗き込みましたが、

「ピーチ!!!!!!」

断末魔と共に上がった激しい水しぶきが、猿の顔を濡らすばかりでした。



-4-

「大丈夫、きっと下流で誰かに拾われることでしょう。けれど拾う人はあなたのルーツを知らない。もしまた中から男の子が生まれたとしても、次に付けられる名前は“桃太郎”からやり直しになるのでしょうね」

どんぶらこどんぶらこと波打つ渓流を見下ろし、時折浮かぶ小さな“桃”に向かって、鬼鬼鬼鬼鬼鬼犬鬼犬犬鬼鬼鬼犬鬼犬犬犬犬鬼犬たちは、どこか悲しげにそう語りかけるのでした。
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