ぼくと山の魔物

「待って食べないで!ぼくは生贄じゃない、村からおまえ宛の生贄は違う人があとで来るから」

「え?でもお前、縄で縛られて酒とか食べ物に囲まれて横たわっているじゃん」

「これはそういうやつなんだよ、遊び」

「どういう遊びなんだよ」

「遊びというかまあ、あれだ、この状態をスマホで撮るんだよ、ぼくがいろんなごちそうに包まれてる、そういうきれいな写真が撮れるの、で、インスタグラムに上げるの」

「あぁ・・・」

「分かったら離してくれ、ぼくは生贄じゃないんだよ」

「でもお前、★★★IKENIE★★★って書いてあるシャツを着ているじゃん」

「ファッションだよ」

「ファッションか・・・」

「でもお前、贄ペディアに今月の生贄だって載っているじゃん」

「いやいやよく見て、"この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です"って書いてあるでしょ、ぼくの名前の所にも[要出典]ってほら」

「そうか・・・」

「贄ペディアは誰でも編集することが可能だからね、だれかのいたずらだよ、きっと。インターネットを利用するときには、こうした真偽のわからない情報がたくさんあることを念頭に置き、自分に都合のいい情報ばかりを鵜呑みにせずきちんとデータを精査することが

「でもお前、今村長に電話して確認とったけど、生贄はお前で間違いないって言われたんだけど」

「えっ?うちの村長はひよこだから人語は解さないよ」

「でもお前、YESならば一回、NOならば二回鳴いてくれ、ってことわった上で質問したら一回鳴いたんだけど」

「村長はひよこの上にアホだからそういうのわからないよ、ランダムに鳴いているだけだよ」

「まじか」

「まじだよ、三歩歩けば脳がフォーマットされる鳥頭だよ」



「でもお前・・・さっきから黙って聞いていれば好き放題言いおって!誰がアホひよこだ!!!」バリバリッ

「そ・・・村長!?」

「お前がおとなしく生贄になるとは思えなかったから、魔物に変装して待ち伏せ、試させてもらったのだ、そうしたら案の定!!」

「ひーっ」

「お前がおとなしく魔物に喰われてくれなければ村が滅びるのだ、それが分からんのか!!」

「で、でもちょっと待ってください、確か魔物が要求している生贄は若い村娘のはずではありませんか」

「あの魔物はひよこの上にアホだからそういうのわからないのだ、人間の雄雌の区別などつくわけないし、お前が村娘だと言っても気づかれないのだ!!」



「・・・さっきから黙って聞いていればお前言いたい放題を!誰がアホひよこだ!!!」バリバリッ

「ま・・・魔物!?」

「村長が最近生贄にひよこばっかり寄越すから生贄に変装して試させてもらったのだ、さすがに人間と鳥の区別はつくわ!!」

「なんだと?この姿を見ても同じことが言えるのか?!」バリバリッ

「ひ・・・ひよこ!?」

「ピヨピヨ」

「なんてこった、ぼくはずっとひよこと会話していたのか。あれはひよこの村だったか・・・。」

「ピヨピヨ」

「人間と会話してみたくて魔物に化けたのに、意味がなかったな、ぼくも本当の姿に戻ろうピヨ・・・」バリバリッ

「ピヨピヨ」

「ピヨピヨ」



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