愛しいものの落とし物

久しぶりに、命を落とす夢を見ました。自分が死んでしまう夢。
ぼくは死んだことはないので分からないはずなので、変な言い方になるのですが、これ、
すっごいリアルなんですよね。怖かった。

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森とか川に囲まれている場所に、古い、大きなお屋敷があって、そこへ行く夢なんです。
昼なのか夜なのか分からないんですがとにかく薄暗い。
お屋敷は、二階の外壁をぐるっと一周、一つのベランダが囲んでいるという、
ちょっとかわった構造をしているのですが、そこから子供がぼくを見下ろしているんですよ。

ぼくが目指しているのは、お屋敷の裏手にある小さな井戸でした。
覗きこんでも真っ暗で何も見えず、中の空気はひんやり冷たい感じがします。
二階の子供も、ベランダ沿いについてきて、相変わらずこっちを見ていました。

ぼくはこの井戸の中の何かを探しているようなのですが、当然底は深いので、
手なんか入れたって全然届きません。
しばらく迷いましたが、意を決して、ぼくは鎖を伝って井戸の中へ降りました。



どのくらい降りたでしょうか、やがて、足が冷たい水面に触れました。
ライトをつけてみると、水には、小さい人みたいなものがたくさん浮いています。
よく見るとそれは、ボロボロのフランス人形でした。

探していたものというのはこの人形たちだったようで、ぼくはいそいでそれらを
水からすくい、腕にかかえると、また鎖を登っていきます。見上げると、
二階から見ていた子供が、屋敷から出てきて、笑いながらこちらを覗き込んでいました。



井戸から出ると、ぼくが人形を足元の石畳に並べていると、
子供がやってきて、ぼくを見て、すごい笑みをうかべて、言うんです。
さっきまで一言もしゃべらなかったのに。はっきりと。




 「ほんとにありがとう、大好きな人形なんだ、
落としてしまった時には、もう戻ってこないかとおもった」




って。めっちゃ嬉しそうに言うんです。
言いながら、人形をひとつひとつ、大事そうにタオルでふいてあげているんです。
人形たちも心なしか嬉しそうに見えます。

よかったね。これからは、大事に気をつけて遊ぶんだよ。
井戸はあぶないし、今度はきみが落ちたりするといけないから
もっと安全なところで遊ぶと良いよ。

ぼくはそう伝えると、人形を抱いて何度もお辞儀をするその子に手を振り、
帰路につきました。




で、その後
帰り道、歩いていると、隕石みたいなやつが頭に落ちてきて潰されました。
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